初版2010/11/29
改訂2010/xx/xx
 
 
SC09報告(未完)
小柳義夫
 
http://olab.is.s.u-tokyo.ac.jp/~oyanagi/reports/SC2009.html
(再配布は自由ですが、上記ページから最新版をご利用ください。)
http://olab.is.s.u-tokyo.ac.jp/~oyanagi/conf.html にはその他の国際会議の報告などがありますので、ご興味があればご笑覧ください。
 
この報告は、主として私のメモに基づいてまとめたもので、英語の聞き違い、メモ違いなど多数あると思います。ご容赦ください。ご指摘は歓迎します。改訂に反映させたいと思います。なお、講演紹介中の[]内は、私の感想またはコメントです。
 
この報告はまだ書きかけですが、早く大まかの情報が欲しい人のために公表します。今後インクリメンタルに修正増補する予定です。
 
1.はじめに
 
 SC09: The International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage and Analysis (通称 Supercomputing 2009) は、21年目の今年、オレゴン州ポートランドのOregon Convention Centerにおいて11月14日(土)から20日(金)まで"Computing for a Changing World"の標語の下に開かれた。会議名は時々変わるが、ここ3年と同じで、"Analysis" を名乗っている。このシリーズの国際会議で、ポートランドは3回目の開催である。第1回目は1993年で私も出席したが、第2回目の1999年は出られなかった。会議場は同一であるが、増改築されたとのことである。
 ポートランドはオレゴン州最大の都市である(州都はセイラム)が、観光的にはめぼしいものはなく、比較的落ち着いた街である。市電(MAX、一種のlight rail)が発達していて、しかも会議場を含め市の中心部は無料区間になっているので、交通は便利である。「エコ」の街と言われているそうだ。空港からダウンタウンまでも一本でつながり、わずか$2.30である。SCでは、ホテルと会場の間にひっきりなしにバスを走らせるのが通例であるが、今回は特に遠いホテル以外はバスサービスをしなかった。
 この季節は一種の雨期だそうで、傘が要るほどではないがしとしと雨が降ったりやんだりして陽の光を見たのは1日だけであった。1993年のSC93ではConference Bagの中に傘が入っていたことを覚えている。今回は傘ではなく、プラスチックの水筒が入っていて、ペットボトルではなく水道の水を飲めと言うことらしい。気温はこの時期の東京より若干低い程度でであるが、雨と風のために結構寒い感じがした。
 今回は、直前の11月13日(金曜日)に、行政刷新会議の事業仕分け第3ワーキンググループで、次世代スーパーコンピュータの2010年度予算が凍結という判断がなされ、日本からの参加者は重苦しい気持ちでポートランドに向かった。このニュースは海外でもかなり知られていて、いろんな人から「どうなっているのか」「新しいニュースはあるか」などと聞かれた。πの計算などでも有名なLBNLのさる方は、「そのメンバーはみんな反科学なのか。日本にも、進化を否定する創造主義者(creationists)のような人がいるのか。」と言っていた。いかにもアメリカ人らしい発想である。また 別の人は、「アメリカは$1Bを毎年スパーコンピュータのために投資し、EU諸国はHPCへの投資を倍増しようとしているときに、日本はいったい何を考えているのだ」と言っていた。「地球シミュレータでもそうだが、それ以前のマシンの数十倍のマシンを一つだけ作る、というやり方は間違っている。」とも言われた。
 今年変わった点として会議のプログラムがA4版になったことである。これまでのA5版よりは見やすかった。
 今年のSCの全体的な印象として、顕著な目玉はなかった感じである。多少目立ったテーマとしては、去年と同じであるが
 
 a) アクセラレータ
 b) エクサフロップス
 
であろう。各社の目玉は企業展示の項で述べる。
 かたや、中国・インドの進出が話題になっている。Top500では、日本の最高位が31位の地球シミュレータ(ES2)であったのに対し、中国はなんと堂々5位を占め、韓国のKISTIが14位、サウジアラビアのKAUSTが18位、インドも前回から出ているがComputational Research Laboratories, TATA SONSのクラスタが26位を占めている。日本は、次世代が出来たとしても、どうなってしまうのであろうか。
 日本にとって喜ばしいニュースは、三浦謙一氏(NII)がSeymour Cray賞を受賞したことである。また、Gordon Bell賞のCost/Performance部門で浜田剛氏(長崎大)が受賞した。
 
 その他の話題としては、10Gbpsのネットワークが急速に普及しつつあり、100Gpbsへの展望も語られ始めている。並列計算機の相互接続網としては、レイテンシがどこまで下げられるかが興味のあるところである。あと、銅線でどの距離までつなげるかも問題である。
 
 最近グリッドが当然技術となって、あまり声高には語られないが、最近は「クラウド」への言及が多い。クラウドは、グリッドの資源提供者側を隠蔽する技術であるが、ある種のメーカの言は、昔のメインフレームを思わせるところがある。
 
2.会議の歴史
 
 毎度のことであるが歴史を示す。この会議はアメリカの東西で交互に開かれて来た。年次、開催都市、展示・チュートリアル等を含めた総参加者数、technical program有料登録者数、総展示数、投稿論文数、採択数、採択率を示す。初期の回では、テクニカルプログラム登録者という概念がなかった模様である。今回のパネル"SC: The Conference" での推定値を記す。2011年以降の開催地は公式発表ではない。
回数年号

 
場所

 
総数

 
tech.

 
展示数
 
投稿数

 
採択

 
採択

 
1回(1988) Orlando 1495 700-800 36 150 60 40%
2回(1989) Reno 1926 1400 47 ? 88  
3回(1990) New York 2303   59 ? 92  
4回(1991) Albuquerque 4442   80 215 83 39%
5回(1992) Minneapolis 4636   82 220 75 34%
6回(1993) Portland 5196   106 300 72 24%
7回(1994) Washington 5822 2209 122 ? 77  
8回(1995) San Diego 5772 2017 106 241 69 29%
9回(1996) Pittsburgh 4682 1642 121 143 54 38%
10回(1997) San Jose 5436 1837 126 334 57 17%
11回(1998) Orlando 5750 1984 130 270 54 20%
12回(1999) Portland 5100 2124 149 223 65 29%
13回(2000) Dallas 5051 2096 159 179 62 35%
14回(2001) Denver 5277 2017 155 240 60 25%
15回(2002) Baltimore 7128 2192 221   67  
16回(2003) Phoenix 7641 2390 219 207 60 29%
17回(2004) Pittsburgh 8879   266 192 59 31%
18回(2005) Seattle 10000+   276 260 62 24%
19回(2006) Tampa 9000+   258 239 54 23%
20回(2007) Reno 9300+   314   54  
21回(2008) Austin 11000+ 4100+ 337 277? 59 21%
22回(2009) Portland 10200 4100 318 261 59 23%
23回(2010) New Orleans            
24回(2011) Seattle            
25回(2012) Salt Lke City            
26回(2013) Austin?            
27回(2014)              
28回(2015)              
 
私は、第1回、第4回、第12回、第19回は欠席した。この会議は元々アメリカの国立研究所の関係者を中心にボランティア的に発足したところに特徴がある。当初はアメリカの国内会議の印象が強かったが、10回のころから次第に国際的な会議に成長してきた。今年は、アメリカ人以外の登録者(technical programの登録ではないと思うが)は70カ国1878人であった。アメリカ関係では、50の州とDCおよびプエルトリコから1名以上の参加があった。(http://sc09.supercomputing.org/files/SC09Facts.pdf
 
 日本の研究者もこの会議の運営に大きく貢献している。SCxyの全般を企画するSteering Committeeには昨年から松岡聡氏(東工大)が加わっている。
 
 プログラム委員会関係では、Technical Program Chairの下にいくつかの組織がある。
A) Technical Paper ChairはAndrew Chen (Intel) とともに松岡氏が務めている。
1) Application Areaには委員として青木尊之氏(東工大)、松田秀雄氏(大阪大)、中島研吾氏(東大)
2) Architecture/Network Areaには委員として中島浩氏(京都大)、清水剛氏(富士通研)
3) Grid Areaには委員として伊達進氏(大阪大学)と田中良夫氏(産総研)
4) System Software Areaでは佐藤三久氏(筑波大)がArea Chairの一人を務め、委員として石川裕氏(東大)、丸山直也氏(東工大)、住本真司氏(富士通研)
5) Storage Areaでは委員として建部修見氏(筑波大)
B) Tutorial Committeeには、委員として石川裕氏(東大)と末安直樹氏(富士通)、
C) Poster では、Architecture Area Chairを朴泰佑氏(筑波大)が務め、委員として工藤知宏氏(産総研)と中村宏氏(東大)がいる。
 
 おそらく日本からの委員としてはこれまで最大の数であろう。
 
3.全体像
 
 会議はあまりにも巨大で、全体像をつかむことは困難である。。
 
 Technical programの主要部は17日(火)からであるが、会議そのものは14日(土)から始まっている。15日(日)と16日(月)にはチュートリアル(28件(提案は71件、全日は12件、半日は16件)が行われていた。会議に附属して、独立に組織されたいくつかのワークショップも開催された。15日(日)には5件、16日(月)には6件、20日(金)には3件があった。
 
 16日(月)夜7時の展示会場における Gala Openingsから会議の中心部分が始まる。このとき展示会場が参加者に初めて公開されその場でおつまみ程度の軽食が提供される。例年、おつまみがすぐなくなってしまい、特に展示関係者にはなかなか口にできないが、一昨年からは一般公開より少し前から食べ物を提供していて、展示関係者には好評であった。。
 
 展示は、企業展示も研究展示もますます盛り上がっている。とくに企業展示はチュートリアルとともにこの会議の最大の収入源である。展示は16日(月)の夜から19日(木)の4時までの実質3日間であるが、その設営も撤収もなかなか大変である。
 
 火曜日の朝からtechnical programが始まる。火水木の8:30--10:00はplenaryで、18日(火)は開会式と招待講演、19日(水)と20日(木)にはそれぞれ招待講演が2件あった。10時からはコーヒーブレークで、展示会場も10時からオープン。飲み物とともにベーグル、菓子パン、果物なども提供される。朝が早いので、これで朝食代わりにしている人も多い。
 
 10:30から17:00まではいろいろなプログラムが多数並列に設定されている。最近はポスター発表も重要視されている。投稿は150件以上あったが、厳正な審査の結果、通常のポスターが65件、学生のポスターが12件採択された。今年は、水曜の10:30からポスター発表者の短いプレゼンテーション(インデクシング)があった。このほか、8件のelectronic postersもあった。火曜日5時15分から7時までPosters Receptionがあった。
 
 金曜は展示もなく、早めに帰ってしまう人も多いので、毎年客寄せに苦労する。
 
 
4.Social Events
 
 恒例により、19日(木)の夜は、ダウンタウンのPortland Center for the Performing Artsでevening eventがあった。
 
 このほかこれも恒例だが、いくつかの企業が、お客様を招待するパーティーが火曜日と水曜日にあった。また富士通は15日(日)夕方に、日本からの参加者を対象にセミナーとパーティーを開いた。
 
5.展示
 
 主催者発表によると、今年は企業展示195件(去年の220件より減った)、研究展示123件(去年の117件より多く過去最多、全体で318件(去年は337件)であった。展示の純面積(ブース面積の合計の意味か)は131,650 ft2(11800m2)とのことである。これは1階におかれている。もともと2階にも別の展示会場が予定されていたようであるが、企業展示のキャンセルがあり1階だけに配置したようである。
 
 例年のごとくTechnical programとは独立にExhibitor Forumが2並列で火水木にあり、展示出展企業が30分ずつ講演した。このほか、各展示ブースでは企業展示でも研究展示でも、プレゼンテーションがひっきりなしに行われており、とてもつきあいきれない。
 
5-1 企業展示
 
 今年は企業展示は195件であった。今年目立ったのはGPGPUなどのmanycore関係のハード・ソフトの出品が多かった。ただすべてが順調なわけではない。
 常連の企業は日本系の企業を含めてそれぞれ元気に出展していた。
 
1) Microsoft
 SCへの登場の歴史は短いが、今回最大のブース(4,500 sq.ft.)をかまえていた。Windows HPC Server 2008が目玉のようで、いろいろなデモを示していた。大きな会場を用意して、自社関係者だけではなくいろいろな人のプレゼンが行われていた。
 
2) IBM
 SCxyの常連であり、大きなブースを会場のいい場所に出していた。今年の目玉はPower7のボードで、黒山の人だかりになっていた。水冷の銅パイプが印象的だった。ボード1枚で160Kgだという話である。ボード自体はIBMに親しい日本の某メーカー製だという噂が流れていた。
 
3) 富士通
 富士通は、SPARK64 VIIIfxのチップを4個搭載した次世代スパコンのボードを展示していた。これも水冷の銅パイプが印象的である。ウェファーの展示と合わせて結構客を集めていた。
 
4) NEC
 SC-9を展示していた。
 
5) 日立
 今回はパネルが主だったので、若干迫力に欠けた。
 
6) NVIDIA
 大きなブースを出していた。9月に次期GPUであるTesla Fermiを発表したが、11月10日になって出荷が遅れそうだというニュースがあった。どうなるのであろうか。割に広いプレゼンテーションスペースがあり、以下のような講演があったそうである。
* Jack Dongarra? University of Tennessee
* Jeff Vetter? Oak Ridge National Laboratory
* Satoshi Matsuoka? Tokyo Institute of Technology
* Pat McCormick? Los Alamos National Laboratory
* Paul Crozier? Sandia National Laboratories
* Ross Walker? San Diego Supercomputing Center / UC San Diego
* Mike Clark? Harvard University
 
7) 今年登場しなかった会社としては
a) ClearSpeed: 去年はリスク分析市場で活躍すると言っていた。
 昨年5月にこの会社のCTOを辞めたJohn Gustafson氏は、Director of Intel Research, Santa Clara at Intel とのことである。
b) Quadrics: 去年は展示がキャンセルされたが、今年の6月閉鎖。レイテンシが小さいことをうたっていたQsNet IIIはついに出なかった。
 
5-2 研究展示
 
 全体で123件であったが、そのうち日本からの研究展示は以下の25件であった。去年出典していなかったところはNewと記す。
 
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
ブース内にプレゼンテーションの場所を設け、多くのプレゼンを行っていた。スピーカーは以下の通り。
−Kate Keahey (ANL) / Hidemoto Nakada (AIST)
−Tony Hey (Microsoft)
−Eric Kronstadt (IBM) / Satoshi Itoh (AIST)
−Jesus Labarta (BSC)
−Philip Papadopoulos (SDSC) / Takahiro Hirofuchi (AIST)
−Craig Lee (OGF)
−Rudolf Eigenmann (Purdue U.) / Masashi Matsuoka (AIST)
−Stuart Martin (ANL) / Yoshio Tanaka (AIST)
−Eddy Caron (ENS Lyon) / Hidemoto Nakada (AIST)
−Franck Capello (INRIA)
−Evangelos Haniotakis (ESnet) / Ryosei Takano (AIST)
−Matthias Mueller (TU Dresden)/Yoshio Tanaka (AIST)
−Jack Dongarra (UTK)
−Geoffrey Fox (Indiana U.) / Isao Kojima (AIST)
Center for Computational Sciences, University of Tsukuba
PAX以来の研究活動とともに、現在のセンターの研究活動を紹介。
Center for the Promotion of Excellence in Higher Education, Kyoto University (New)
高等教育研究開発推進センターであるが、情報メディア工学講座情報可視化分野 小山田研究室のhome pageがリンクされている。
Cybermedia Center
去年はIST/CMC - Osaka Universityの名前で出展。今年は大阪の文字がないので、どこの国かわからない。
Doshisha University
GRAPE Projects
Hokkaido University
去年はIndustry Exhibitorだったが、今年はResearch Exhibitor
Information Technology Based Laboratory (ITBL)
Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC)
去年はIndustry Exhibitorだったが、今年はResearch Exhibitor
Japan Advanced Institute of Science and Technology (JAIST)
Japan Atomic Energy Agency (JAEA)
Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA)
Kansai University
Kyushu University
Nara Institute of Science and Technology (NAIST)
National Institute of Informatics (NII)
National Institute of Information and Communications Technology (NICT)
去年はIndustry Exhibitorだったが、今年はResearch Exhibitor
NTTは新世代ネットワークテストベッドを用いた実証実験をNICTブースで公開
Research Organization for Information Science & Technology (RIST)
RIKEN
Saitama Institute of Technology
Saitama University
T2K Open Supercomputer Alliance
去年はITC, The University of Tokyoとして出展
The University of Tokyo 平木研究室
Tohoku University
Tokyo Tech (Tokyo Institute of Technology)
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去年出展したが、今年は出さなかった。
 Ehime University
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6.Technical Papers